前回の記事にて英語力を早慶レベルにまで引き上げるための英文法勉強法について記載したが、それを踏まえて今回からは実践的に英文法を解説していこうと思う。
今回解説するテーマは「冠詞」だ。
英語業界では「前置詞3年、冠詞8年」と言われる通り本気で冠詞を理解しようと思ったら8年の勉強を要するほど扱いが難しい。
しかし、英語を学ぶ上では冠詞は基本であり、日本の英文法教育ではまず先に冠詞の扱い方を学ぶ。
それでも大半の受験生は冠詞がなんたるやを全く理解できていない。
どんな場面で”a”を使い、”the”を使うのか、はっきりと説明できる学生は少ない。
まあそもそも冠詞自体が難しいし、ネイティブだってはっきりと冠詞の概念なんか理解していない。
大学受験レベルであれば基本だけ抑えておけば十分だ。
しかし、何度も言うが冠詞は英文法において基本中の基本事項である。冠詞の理解なくして英文法の理解はあり得ない。
ということで、今回はテクニカルな説明抜きにして冠詞の概念を理解していただくために記事を書いてみたいと思う。
早慶を目指す受験生諸君は参考にしてほしい。
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不定冠詞
まずは”a”や”an”などの不定冠詞の概念について解説する。
断っておくが、説明の便宜上「不定冠詞」というワードを使用しているだけであって、英文法を理解する上でこうした用語を覚える必要は全くない。
受験生諸君にはこうした用語を覚えるよりまず、英文法の概念理解に専念してもらいたい。
では、早速例を出して見ていこう。
皆さんは以下の違いがわかるだろうか?
①I like a dog.
②I like dog.
③I like dogs.
全部同じ意味じゃないの??と思った方は冠詞を理解していない方である。
“dog”とはご存じの通り「犬」という意味であるが、冠詞の付き方で意味するところは全く異なってくる。
皆さんは「犬」を思い浮かべたら何をイメージするだろうか?プードルでも柴犬でもなんでもいいが、もし特定の一匹の犬をあなたが思い浮かべていたら、それは”a dog”である。それだと識別できる犬が”a dog”である。
すなわち①は「私は特定の一匹の犬が好きです」という意味になる。
次に、犬と聞いてもしあなたが犬の肉を思い浮かべていたらどうだろうか?豚と聞いて豚肉を思い浮かべる人がいるように、犬と聞いて犬肉を思い浮かべる人もいるかもしれない。それは犬の外見ではなく、犬の「中身」を思い浮かべているのである。
犬の「中身」を思い浮かべた場合、冠詞はつかず”dog”ということになる。
すなわち②は「私は犬の肉が好きです」という意味になる。
最後に、「犬」と聞いて、プードルだか柴犬だかはっきりと区別はできないが、なんとなくボヤボヤと「犬」っぽい概念を思い浮かべた場合はどうだろうか?
その場合は特定の一匹の犬と特定はできず、「一般の犬」を思い浮かべているということになる。こうした場合は「色々な種類の犬を含んで一般に犬」という意味になるので、”dogs”ということになる。
すなわち③は「私は一般に犬が好きです」という意味になる。
以上をまとめると、
①I like a dog.「私は特定の一匹の犬が好きです」
②I like dog.「私は犬の肉が好きです」
③I like dogs.「私は一般に犬が好きです」
ということになる。
練習問題①
では、練習がてら以下の例文を訳してみよう。
①Cats are all over.
②Cat is all over.
いかかであろうか?
①は複数形のsが付いているので、「(どんな種類のネコか知らないが)そこら中にネコがいる」という意味になる。
②は冠詞もなく複数形のsもついていないので、ネコの「中身」を表していることになる。従って、「ネコの肉がそこら中に飛び散っている」という気持ちの悪い例文になる。
練習問題②
以下の英文を訳してみよう。
①I put apples in the salad.
②I put an apple in the salad.
③I put apple in the salad.
慣れてきただろうからサクサクいこう。
①は複数形のsが付いているので、「サラダにリンゴが丸ごと数個ボコボコ入っている」という意味になる。リンゴが丸ごと何個もサラダに入っているのである。
…どんなサラダだろうか?
②は特定の一個のリンゴがサラダに入っているということなので、「サラダにリンゴが丸ごと一個入っている」という意味である。なんとも豪快なサラダだ。
③はリンゴの中身を入れたということなので、「サラダにリンゴのスライスが入っている」という意味になる。おいしそうなサラダだ。
さて、練習問題を解いてみて冠詞の重要性がお分かりいただけただろうか?
冠詞1つで意味が全く異なってくるのである。
冠詞は英文法の基本だ。絶対に疎かにしてはならない。
定冠詞
定冠詞に関しては定義がある。ゴタゴタ言わずにこの定義を覚えてもらえばいい。
定冠詞”the”は「比較」である。
比較する対象があればどんなものにも”the”が付くのである。
キリがないがいくつか例をあげてみよう。
the right-the left
the sea-the land
the front-the middle-the back
the summer-the autumn-the winter
the east-the west-the south-the north
いかがだろうか?
比較対象があるものであれば全て”the”が付くのである。
では、以上を踏まえて以下の違いはおわかりだろうか
①the pitcher
②a pitcher
①は、「ピッチャーというポジション」という意味で使われる。野球の9つのポジションのうちのピッチャーというポジション、という意味である。
一方で②は、「ある特定の1人のピッチャー」という意味で使われる。
つまり「ダルビッシュはピッチャーです。」という文章を英語に直す場合は”a pitcher”が適切なのである。
I belong to the baseball club.
こちらの例文も同じ理由である。
他にいくつか部活がある中の野球部。という意味で他と比較して野球部という意味だから”the baseball club”と言うわけである。
比較する対象がなければ別に”the”はつかない。
ここは多くの日本人が勘違いしているところなのだが、例えば漫画「のだめカンタービレ」の英訳版でこんな英文が登場する。
Nodame want you to play piano.
中学生で学ぶ英語で言わせれば、「ピアノを弾く」というのは”play the piano”である。中学では訳も分からず”play the piano”と覚えさせられるが、実際にはネイティブは”play piano”とも言う。
これは、”the”無しで”piano”とあるからピアノの「中身」だけを表しているのである。
“the”が無いということは、他と比較できないということであるから、それは他と比較できないほどの技術を持っているということである。
よって、”play piano”は「プロがピアノを弾く」という意味になる。
すなわち、「ピアノの中身を引き出す」→「(他と比べる技術が無い)プロがピアノを弾く」という意味になるのである。
つまり上記の英文は「のだめは(プロである)あなたにピアノを弾いてほしい」という意味である。
I want to go to sea.
と言えば「海の中身に行きたい」という意味であるから「海に飛び込みたい」という意味になるし、冠詞の使い方次第で意味表現を全く変えることができるのである。
以上、英文法で最も重要かつ基本事項である冠詞について見てきたが、いかがだっただろうか。
こうした英文法の概念を理解しておくのとしていないのとでは受験英語を解く上で全く状況が異なってくる。
本記事が英文法を学ぶ上で参考になれば幸いである。
ちなみに、冠詞のことを漫画で学べる本があるので一冊紹介しておく。
私もこちらの本を参考にしたので、受験生諸君も参考にするとよい。
漫画なので受験勉強の合間にでも軽く読むことができるのでオススメだ。